たかがプレゼント如きでよろこぶ年でもなくなった。あたしが無感情な所為もあるのかもしれない。
生きてゆく間がまた一年減っただけなんだ。
くだらない日常の、くだらない夕暮れの、下らない雑踏の中のひとコマ。
制服のブラウスの胸ポケットからボックスの煙草を取り出した。制服姿で吸うのは好きじゃない。補導されるかもしれないし、匂いが付いて教員にばれたらそこであたしの学校に行く意味は無くなる。せっかく推薦を狙って大人しくしているって言うのに。
煙草を咥えて着火。チェリーフレーバーのリトルシガー。二十本入り三百九十円、高いがな。
甘い香りと裏腹な瑞々しいチェリーの味。グロスをぽってり塗りたくった唇を舐めると蜜の甘い味。溜めたまま深呼吸すると苦いコーヒーの味。あんまり、コーヒーは飲まないけど。
肺喫煙は好きじゃない。肺癌を起こして死んだらどうする。でもそれで美人薄命というのも良いな。美人と称されるタイプでもないけど。
ふかすだけで十分な味わいを舌で転がすように味わった。
携帯灰皿に押し付けて火を消した。吸殻をぎゅっと小さくして携帯灰皿を閉じた。
――ばれなくて良かった。
なんて、おばかさん。
世間で賞賛の比喩を浴びせられる十七歳はあまりにもばかばかし過ぎた。なってから解った。もっと早く気付いていても何れ十七歳は来るものだから仕方ないって、諦めていたけど。
きっと他の十七歳は青春を謳歌しているのかもしれない。
他の十七歳は少年院で暮らしているかもしれない。
他の十七歳は必死で働いているかもしれない。
他の十七歳は毎日をぐうたら過ごしているかもしれない。
あたしという十七歳は、雑踏の中、制服姿でリトルシガーをふかす。こころの中で世間を揶揄しながら。
十七歳、なってみると案外綺麗なものじゃなかった。
十七歳、なる前から薄々感づいていたけれど。
嗚呼早く、日々よ過ぎてしまえ。
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自分の誕生日三日前にこんなの書いた。
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